
レッシャーというのは大変なものでございまして、幾らご担当で今ホールの企画担当をやらされているんだというお立場の方でも、実際にご自分がやっておられるときに観客の対応、集客の結果というものの責任といいましょうか、見通し、そういうものを見定めるというのは至難のわざとは申せ重要なことでございます。 最後の「つねに企画を考える」と申しますのは、これは非常に格好のいいことを言うわけです。電車の中に乗っていても、つり広告を見ていても、おれは次の芝居のアイデアを考えているんだ、こう言えばプロデューサーというのは非常に格好いいなということで、非常にナルシズムの表現みたいになるんですけれども、どこからどういう企画が生まれるかわかりません。やはりコロンブスの卵を先に手をつけるというのは大事なことでございます。 私が1つやられましたのは、松竹が東京の池袋のサンシャイン劇場で麻実れいという女優を使いまして、歌入りの「ハムレット」というのをやりました。これは、やっぱりコロンブスの卵なんですね。だれしも考えていたことなんですけれども、「ハムレット」をミュージカル化するということではなくて、「ハムレット」の独白、モノローグを歌にするというアイデア、これは残念ながら松竹の寺川さんというプロデューサーにしてやられた企画でございます。苦し紛れにけちをつけますと、その音楽のグレードが余り高くなかったので、人ごとながら安心をしたというのが私のせこい気持ちでございますけれども、これがもし大名曲の音楽劇だったら、もう土下座して参りましたと言いたいぐらいのことでございます。 だから、そういう発案と申しましょうか、私はプロデューサーというのは、5つのポイントというのか、キャッチフレーズ風に言いますと、まず1つに発案、2にも発案−何かを考える、3に人脈、4に人脈による情報収集、5に初めて実態をつかんで実行する、こういうのをいつもキャッチフレーズに思っておりまして、私どもの劇場に参ります若い制作助手の人たちには、そういうふうな言い方を偉そうにしているわけでございます。 やはりいろいろ複雑多岐な演劇というものをプロデュースするためには、常にアンテナをめぐらせておく。もちろん週刊誌のネタ、あるいはテレビのワイドショーのスキャンダル、そういうものがヒントになる場合もございましょうし、またベストセラーが劇化できないかというような場合もありましょう。いろいろのケースが考えられますが、材料は無限にございます。無尽蔵に材料がある。その材料をいかに積み上げていって、夢はゼロですけれども、1なり2なりの材料から100なり1000なりの企画を立ち上げるというのがプ
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